hirunireの庭

日記、詩(のようなもの)。

十二月の日記

地下鉄のターミナルから地上へと繋がる階段をひとつの方向にむかって駆け上がる。頬を撫でる冷たい突風が下へ下へと吹き抜けていく。北の十二月。 札幌という街を離れてはじめて灰色の天気を愛おしく思えたような気がする。凍てつくような寒さの大粒の湿った…

いつ起こるかわからない地震に、わたしたちはいつまで怯え続けなければいけないのだろう。元旦。テレビやタイムラインから流れる速報に不安が鮨詰めにされて死へと向かっている感覚。「ただちに」とか「なりふりかまわず」といった言葉が目に入り、2011年と…

いまガザで起こっていることはわたしがいくら考えようとも理解することのできない深刻さであると思う、或いはつらいと思う前にいのちが奪われてしまう。そんなに簡単に人が死んでいく姿を見ていながら殺戮が実行されてしまうことを思えば人間が残すことがで…

decaying

留めておきたい感情が誰の言葉にも当てはまらなかったら流れる日月だけが平等に記憶を腐らせることになっている。細胞が、葉脈が、まるっきり入れ替わる頃には私はひとつの葉となって風の中を舞うだろう。塵と等しくなったというひとつの事実に香りづけをし…

10/18

津野米咲さんがわたしの世界から席を外して3年が経った。わたしは赤い公園の熱心なフォロワーではなかったけれど、今年2回失恋してから赤い公園の音楽に救われている。文字にすると淡々とした事実だけれど、わたしは簡単に人を好きにならないから結構来るも…

千日紅

季節は信号じゃないところがおもしろいって思う。いつまでも眺めていたい斜陽の、寒々とした横顔のこと。身体を冷やさないということは温めることではないということ。この世にたらこスパゲッティがあって良かったという雑感。 しばらく会わないと顔も声も忘…

重陽の節句

秋になって暑さのことなど頭からすっかり抜け落ちて、誤魔化しの効かない現実がこちらに向かって歩いてきた。すこし涼しくなっただけなのに、今まで蓋をしていた事実が自力で起き上がり、こちらは寂しくなったり涙があふれたりして忙しい。はじめて秋が苦手…

われわれは、たやすく歓び絶望する

翌朝には、絶望するより先ず先に飛び込んでくる朝陽に世界は絶望するより美しいと、どうせ悟るのに訳もなく涙が出るのは、まだわたしがなにも知らないってことなのだろうか? 朝を諦めない人になる、その長い夜に耐えられるだけの鈍さを今では愛おしいと思う…

ピルとソフィスト

いまはピルの休薬期間で辛かったので仕事を休んだ。いつまで何と何の調味料がかけ合わさっているのかもわからないごはんを3食食べその日を繋いでいくのだろうと思った。味覚の解像度が下がってぼやけたまま、このまま一生この仕事がつづくの?って思った。泣…

素直になることは柔らかいところが剥き出しになることと同じだから本当に僅かな摩擦で痛い

悩みながら生きていくことってそんなに許されないことなのかなってりゅうちぇるのニュースをみて悲しくなった。人の前に出るからといって人生まで完璧になんてしなくていい。求められた役割を果たさなくても生きているというそれだけでひとは、充分うつくし…

日記

6/10 昨日行ったライブの高揚感がさめないままにホテルのベッドの中でミツメを聴いていた。大学2年生だった2016年の一番音楽を聴いていた時期にミツメを知った。当時はサブスクが日本に入ってきたばかりで、バンドをやっている知り合い以外に契約している人…

キッチンに立つ

この前、友人宅のキッチンをかりて久しぶりに料理をしたら、なんだか自分の作ったごはんの味以上に自分で作ったという事実が心地良くて、次の日にフライパンと包丁を買いに行った。職務上あまり料理ができない環境に住んでいるけれど、規範の中での自由の縁…

春永に

住み慣れた町を離れて、なんとか一週間が経つ。職場の規則が厳しくて、なかなか眠れない日が続いていた。生まれてから初めてのフルタイムの仕事だから、と頑張ろうとする気持ちもあるが、もうわたしは無理はできない身なのだということを毎晩服薬する度に否…

ドミノ倒しの様にあっという間に雪が解けて、霞んだ緑が起き上がる。風が起れば舞う砂嵐に背中を押され、焦らされる。泥水を避けて歩く。つい最近まで薄氷に覆われていたそれらが全て最初から何もなかったかのように干上がっていく。北の春には桜はない。わ…

今日は元旦でただの日曜

生温かい夢を見させてくれる音楽にいつまでも浸っていたい。記憶のなかの人々は、雑踏の中にいて此方を見ている。わたしも誰かの記憶にいるのかちゃんと不安になる。でもきっと居る。だって居たことには代わりはないから。Alright。極めて個人的な感情を抱く…

12月

言葉に対して自分が従属していたことに気が付く。何に対しても紋切り型の相槌しかしなくなった。限られた語彙の中、感情の選択肢、そして最後に着地する幸福で希薄な希死念慮。取って付けたような逆接の接続詞(それでも、)でなんとか持ち直す。求めれば大…

思い出は一瞬なのに一生ついてくる

好きだった人の残影はとうに忘れたつもりでいた。ふとしたときによみがえってくる温度や声が、時計を狂わせてしまう夜に何度も何度も思い返す。第三人称になって不完全な反芻をしてみたりもする。衝動で連絡をとって擦り切れたテープをすべて今のものにして…

猫とアレルギー

久しぶりにiPodの電源を入れたら、きのこ帝国の「猫とアレルギー」が入っていて、私だなと思った。その曲を知った当時は文字通りのどん底にいて、その曲に自分を投影して涙を流していた。今となってはその頃眠れなかったのは、きっと眠りたくなかったから。…

頼りない天使

頼りない天使はネルシャツを着ていて 寝癖のままコンビニで煙草を買うらしい 今の今まで卵も割れなかった天使は すぐに忘れられてしまう意味のない 言葉を沢山持っていて 人間の世界にかろうじて溶けこんでいる ときどき寂しくなって空の写真を撮る 頼りない…

長風呂は旅、湯舟は車窓。

働きはじめてから、日曜日はなんにもしない日だということにしている。休みの日だから、晴れているから、と無理に出掛ける必要もないだろう。堂々と休み、シーツを洗濯して、育てているサボテンの写真を撮る。最近は暑い日が続いているから入浴は朝晩にサッ…

喫茶店の料理(のようなもの)に手をつける度に、もっとまともな人生があったはず、とか思って窓の外 遠くを見ていた頃が懐かしいくらい。働きはじめて時間の流れる緩急をうとましく思ったり、“まとも”な職場にいる人たちに愛着が湧いたりしている。働くとい…

夏日

よーいドンで始まった春。そして芝生は同じスピードで同じ長さに生え揃った。そんなところに今年最初の夏日に寝っ転がってみた。空は広くて、控えめにいっても最高だった。村上春樹の「5月の海岸線」を読んだ。書き出しが最高で、これはかなわないと思った。…

桜が咲いた。うららかで生ぬるい風を感じていたら、ほんとうに、ほんとうに待ち望んでいた春が来たのだと実感して、どこかへ行かなければ、と考えたりしている。相も変わらず、実家暮らし・無職・彼氏なしの自分だけれど、それなりに楽しく生きている。昨年…

ストーリーテラーは水に浸かる 詩

いくつもの感傷のささくれが 同時に悲鳴をあげている シーソーゲームの結末はいつも おなじで決まっているから 君は風呂場で泣くの? 傷口の血が乾くのは、自分自身の進化なのだろうか? 冬のつめたさは指の腹をうすくして 隙間風吹く部屋の訪問者はただ隅に…

あした晴れたらまくらを干そう

あした晴れたらまくらを干そう。 今決めたことだ。このところ、札幌は晴れが続いていて、つるつる路面がしゃりしゃり路面になってきている。うれしい。春を感じる。 一方で、路肩どころではなく、路につみあげられた雪の山は一向になくなる気配はない。JRは…

2月9日 間違える

JRは今日もあまり動いていない。ので、いつもより一時間早く家を出てバスに乗り、地下鉄に乗り継ぐ。道中聴いていたビヨンセ “Countdown” が一日の始まりを優雅にしてくれた。去年のクリスマスに街に飾られていたビヨンセとジェイ・Zのティファニーの広告が…

眠り支度

部屋の明かりをつける時はオレンジ色の明かりにしている。理由はないけどなんとなく穏やかな気持ちになれる。あと眩し過ぎなくて好い。その明かりの下で、壁にもたれかかってポータブルCDプレーヤーでお気に入りの音楽を聴きながら詩集を読むのが私の寝る前…

二月

降っているというよりも吹いている雪に身をさらして歩いていると、寒さよりも痛さを感じるようになってくる。ここは札幌、いまは二月。 あと1ヶ月半くらいで冬は終わるけれど、わたしは何か思い出をつくれただろうか。詩の世界では冬はさびしいものだけれど…

砂の堆積

さえぎられた壁のような時間を、たしかにすごしていた。ぬるく怠く、いまもつづいているその時間の堆積に埋もれるかのように、わたしを思いだしてくれるひとなんか誰もいない。白いレースのカーテンに西陽がしみ入ると、この午後が永遠に退屈なものだとわか…