hirunireの庭

日記、詩(のようなもの)。

2022-01-01から1年間の記事一覧

12月

言葉に対して自分が従属していたことに気が付く。何に対しても紋切り型の相槌しかしなくなった。限られた語彙の中、感情の選択肢、そして最後に着地する幸福で希薄な希死念慮。取って付けたような逆接の接続詞(それでも、)でなんとか持ち直す。求めれば大…

思い出は一瞬なのに一生ついてくる

好きだった人の残影はとうに忘れたつもりでいた。ふとしたときによみがえってくる温度や声が、時計を狂わせてしまう夜に何度も何度も思い返す。第三人称になって不完全な反芻をしてみたりもする。衝動で連絡をとって擦り切れたテープをすべて今のものにして…

猫とアレルギー

久しぶりにiPodの電源を入れたら、きのこ帝国の「猫とアレルギー」が入っていて、私だなと思った。その曲を知った当時は文字通りのどん底にいて、その曲に自分を投影して涙を流していた。今となってはその頃眠れなかったのは、きっと眠りたくなかったから。…

頼りない天使

頼りない天使はネルシャツを着ていて 寝癖のままコンビニで煙草を買うらしい 今の今まで卵も割れなかった天使は すぐに忘れられてしまう意味のない 言葉を沢山持っていて 人間の世界にかろうじて溶けこんでいる ときどき寂しくなって空の写真を撮る 頼りない…

長風呂は旅、湯舟は車窓。

働きはじめてから、日曜日はなんにもしない日だということにしている。休みの日だから、晴れているから、と無理に出掛ける必要もないだろう。堂々と休み、シーツを洗濯して、育てているサボテンの写真を撮る。最近は暑い日が続いているから入浴は朝晩にサッ…

喫茶店の料理(のようなもの)に手をつける度に、もっとまともな人生があったはず、とか思って窓の外 遠くを見ていた頃が懐かしいくらい。働きはじめて時間の流れる緩急をうとましく思ったり、“まとも”な職場にいる人たちに愛着が湧いたりしている。働くとい…

夏日

よーいドンで始まった春。そして芝生は同じスピードで同じ長さに生え揃った。そんなところに今年最初の夏日に寝っ転がってみた。空は広くて、控えめにいっても最高だった。村上春樹の「5月の海岸線」を読んだ。書き出しが最高で、これはかなわないと思った。…

桜が咲いた。うららかで生ぬるい風を感じていたら、ほんとうに、ほんとうに待ち望んでいた春が来たのだと実感して、どこかへ行かなければ、と考えたりしている。相も変わらず、実家暮らし・無職・彼氏なしの自分だけれど、それなりに楽しく生きている。昨年…

ストーリーテラーは水に浸かる 詩

いくつもの感傷のささくれが 同時に悲鳴をあげている シーソーゲームの結末はいつも おなじで決まっているから 君は風呂場で泣くの? 傷口の血が乾くのは、自分自身の進化なのだろうか? 冬のつめたさは指の腹をうすくして 隙間風吹く部屋の訪問者はただ隅に…

あした晴れたらまくらを干そう

あした晴れたらまくらを干そう。 今決めたことだ。このところ、札幌は晴れが続いていて、つるつる路面がしゃりしゃり路面になってきている。うれしい。春を感じる。 一方で、路肩どころではなく、路につみあげられた雪の山は一向になくなる気配はない。JRは…

2月9日 間違える

JRは今日もあまり動いていない。ので、いつもより一時間早く家を出てバスに乗り、地下鉄に乗り継ぐ。道中聴いていたビヨンセ “Countdown” が一日の始まりを優雅にしてくれた。去年のクリスマスに街に飾られていたビヨンセとジェイ・Zのティファニーの広告が…

眠り支度

部屋の明かりをつける時はオレンジ色の明かりにしている。理由はないけどなんとなく穏やかな気持ちになれる。あと眩し過ぎなくて好い。その明かりの下で、壁にもたれかかってポータブルCDプレーヤーでお気に入りの音楽を聴きながら詩集を読むのが私の寝る前…

二月

降っているというよりも吹いている雪に身をさらして歩いていると、寒さよりも痛さを感じるようになってくる。ここは札幌、いまは二月。 あと1ヶ月半くらいで冬は終わるけれど、わたしは何か思い出をつくれただろうか。詩の世界では冬はさびしいものだけれど…

砂の堆積

さえぎられた壁のような時間を、たしかにすごしていた。ぬるく怠く、いまもつづいているその時間の堆積に埋もれるかのように、わたしを思いだしてくれるひとなんか誰もいない。白いレースのカーテンに西陽がしみ入ると、この午後が永遠に退屈なものだとわか…

のびかけの爪に気がついたとき空には欠けた月が浮かんでいて透かして見ると瓜二つで青白かったそのうち空が白んできてみたこともない鳥が /野鳥の区別がつかない私が鳴きだしたそんなに朝が来るのが嬉しいなんて夜が終わるのが泣きだしたくなるだなんて私と…

いつかの日記

坂が多い街の高台から見た夕日が綺麗だった。フェンスから伸びる影が横断歩道の白黒みたいに並んでいた。ただそれだけで、明日からも生きてゆこうと思えた。そして、私はシャッターを切る。確固たる正しさみたいなものなんて私の日常にはないけれど、それで…

無題(2020.2)

地下鉄へとつづく階段を下りてゆくとき海の底へ潜っている感覚がよみがえる潜水艦には ひとりぶんだけの席が用意されていてわたしは空のペッドボトルを、口に咥えて左右対称の形をした天井を見上げる苦しさは生きている証拠だから安心するきょうもちゃんと苦…