ストーリーテラーは水に浸かる 詩
いくつもの感傷のささくれが
同時に悲鳴をあげている
シーソーゲームの結末はいつも
おなじで決まっているから
君は風呂場で泣くの?
傷口の血が乾くのは、自分自身の進化なのだろうか?
冬のつめたさは指の腹をうすくして
隙間風吹く部屋の訪問者はただ隅にまとまった
髪の毛を拾ってごみ箱にいれる
次はシンクに溜まった食器をあらう
慣れた手つきで給湯器のスイッチを入れ
将来、君がひとりにならないように願いをこめる
君がしあわせになるように祈りながら
インスタントラーメンの汁がこびりついたのをこそげ落とす
訪問者の白い手にささくれがたくさんあるのを
知ったら君はハンドクリームをぬってくれるのかな?
部屋につるされた玉ねぎのネット、
全部芽が出ていたね
訪問者は君のことをわかろうとしたことをゆるしてほしい
たゆみのない痛みは温かい水にふれて
能動的に鈍くなっていった